五木寛之

60歳から90歳までの30年間は、いや応なく生きなければいけない時代です。今までの延長でなく、別の人生が始まると考えねばならない。世代で三つに分けると、学生・若者、壮年の勤労者、そして60〜90歳の第3の世代とに分けられる。第3の世代は、まず経済的に若者・壮年の世代に負担をかけないように生きることを目指す。若い人は若い人で頑張って生きてくれ、こっちはこっちで生きていくからと。 金のことじゃないですよ。全然違う。カルチャーが変わる、変える。生活を単純化、簡素化するんです。おいしいものをたくさん食べるグルメ生活は、もう第1、第2世代に任せて、違う喜びを見いだす。食べるものも着るものももっと簡素化する。社会的な付き合い、社交もいらない。 今までの社会では、人間は等しく同じように語られてきた。読んだらいい本、聞いたらいい音楽、学ぶべき哲学など人間一般論として画一的に語られてきた。でも、健康法でも大人一般の健康法などあるわけないし、血圧にもすべての世代に通じる標準数値などあるわけがない。一般化しちゃいけないんです。